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コラム:会津の伝統を形作る焼き物「会津本郷焼」

“用”と“美”を兼ね備えた伝統工芸品は会津を代表する郷土料理のベストパートナー

会津本郷焼

とある場所で、お茶をごちそうになった時のこと。手にした茶碗に目を奪われた。見た目は素朴でありながら、触れてみると非常に味わい深い。それは『会津本郷焼』だった。
土を原料とする『陶器』と石を原料とする『磁器』。いずれも製造している会津本郷焼。その歴史は古く、16世紀末に近江(現在の滋賀県)から、千利休の七哲の一人・蒲生氏郷公が若松城主として、この地にやって来たころがはじまりだといわれている。

17世紀中ごろには、保科正之公が尾張(現在の愛知県)から陶工を招いて、本格的な陶器の製造を開始。さらに19世紀初頭には白磁の製法も開発された。今から約170年前、八重が会津若松で生まれたころ、会津本郷焼はすでに、会津地方を代表する伝統工芸品としての地位を確立していたのだ。

そんな会津本郷焼の中でも、会津の『食』と切っても切り離せないのが『にしん鉢』だ。勘のいい方なら、すでにお気づきであろう。会津を代表する郷土料理『にしんの山椒漬け』を作るための陶器である。
「にしん鉢」を焼く際には、表面に「飴釉(あめゆう)」と呼ばれる釉薬(ゆうやく)を塗る。「飴釉」は、他の釉薬と比較して焼き上がり後の冷め貫入が少なく、油染み・水漏れも少ない。加えて塩分や酸にも強いので、しょうゆや酢などの漬け汁ににしんを漬け込むこの料理には、もってこいの容器といえる。さらに陶器は、器自体が温度や湿度を調整する。いわば“呼吸する”器なのだ。そのため漬け汁が熟成され、にしんのうま味もさらに増していく。

にしん鉢は誕生当初、『にしんの山椒漬け』を作るための鉢のひとつであった。しかし、現在まで生き残ってきた。『にしんの山椒漬け』を作る上で、最も適した鉢であったことが一番の理由だが、ただ単に“用”としての使い勝手がよかっただけではない。会津の風土から育まれた“美”も兼ね備えていたのだ。それを証明するかのように、昭和33(1958)年、ベルギーで開催されたブリュッセル万国博覧会で、グランプリを受賞。今なお、作り続けられている。
“用”と“美”を兼ね備えた伝統工芸品は、会津を代表する郷土料理のベストパートナーとして、これからも共に歩んでいく。

福島県観光交流局観光交流課
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